マーケティングの本では良著と言えるほどよくまとまっていて、伝えたいことがわかりやすく書かれているため、お薦めしたい本だと言える。
価格競争ではなく、付加価値競争へ
タイトルから、いかがなものかな?と思う人もいるかもしれないが、暴利を貪る詐欺的なものではなく、きちんと「モノではなく、価値を売る」方に切り替えていきましょうね、そうするとみんなが幸せになれますよ」というお話。
まぁ分かる人にとっては当たり前の話ではあるが。
価値マーケティングについて、例えばオンライン英会話学校を例に挙げると、
・英語のレッスンを提供している=単純なモノ・サービスの提供→内容が似たり寄ったりになり価格競争に陥る。
一方で、
・気持ちのよい事務局対応で、サポートもしっかりしていて、毎回安心して良質な授業が受けられる。=サービスだけでない、価値訴求あり。
(中心顧客はシニア?)
・カウンセリングもあり、クラスもたくさんあり、最短距離で私の求めている能力が身につけられる。私の貴重な時間の節約にもなる=サービスだけでない、価値訴求あり。
(中心顧客はハイレベルなビジネスパーソン?)
・綺麗な外国人女性講師と、気軽におしゃべりができ、毎日の生活にハリが出る。楽しい=サービスだけでない、価値訴求あり。
(中心顧客は、仕事で忙しく、ストレスをやや貯めこんでいる男性ビジネスマン?)
などが例として出せる(上記2点は当社の現在の中心価値訴求。3点目は他社の中心価値訴求)。
もちろん、これら価値訴求は、顧客像が決まってから決めていく点はとりもなおさず重要である。顧客増の絞り込みによっては、市場規模が全然変わってくる。
また大事なところで、モノや基本サービスは1つだが、価値は、お客様の数だけ存在する。
なので、全く同じ、似たり寄ったりにならないので(うまくお客様に伝わっていれば)、際限のない価格競争には陥りにくい。そういった点をわかりやすく書いている点で良著である。
顧客の声を聞きすぎないで作るのは、ある種冒険。
ただ、1点思うところがあった。
●『顧客満足の落とし穴』の項目:
顧客が、事前の期待値を上回った時に、満足度のバラメーターは上昇するので、価値をあげるために、顧客の声以上のものを出す必要がある。
そのためにも、顧客の声を聞き過ぎないでサービスを作っていくことは重要だ。これには大賛成で、当社もそれを実践しているつもりだ。
ただ、例外もあって、例えば、うちの語学サービスは、外国語を外国語で学ぶ、というダイレクトメソッドをコンセプトに設計されてきた。
簡単に言えば、イメージやシノニムなどを活用しながら、英語を英語で学ぶというものだ。
英語ならまだいいかもしれないが、自分自身、中国語、スペイン語、ロシア語も、全て1から学習言語のみで学んだ(唯一韓国語は例外で、教科書のみ日本語併記あり、一方講師はやはり日本語使用不可で学んだ)。
その方が上達のスピードが早かったからだ。
そうした自分の経験もあり、ダイレクトメソッドを採用して、英語学習者、中国語学習者の方に、英語や中国語だけで学んでいきましょうよ、と提案し、講師にもそれを伝えて全てのレッスン日本語禁止で行なってもらった。
しかし、そうした当校の独自コンセプトは、初心者の方はもちろん、中級くらいの人からも、価値と思ってもらえず、入会率もよくなかっった。
その後、しばらくして、お客様の要望どおり、講師は生徒様の要望にあわせて日本語使ってもOK。としたところ、利用者の満足度も高まり、入会率も高くなった。
もちろん、言語習得のスピードは、英語だけ、スペイン語だけで学習するよりも遅くはなると思うが・・・・。
おそらくは、その時、利用者(当校のお客様)の方は、語学の上達だけを価値においておらず、外国人講師との快適な時間、仕事以外に授業でわざわざストレスをためないで楽しく過ごせる価値、などもあったのだと思う。
そうした価値を読み取ることもマーケティングの重要なポイントだと感じると同時に、臨機応変なマーケティング対応が必要だと感じた。